第二回(後編)

 

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(本稿は、福島県企業誘致推進協議会総会-16年4月22日-での 講演の骨子を元にしています。)

企業誘致戦略(続き)

 では、中編に引き続き、企業誘致戦略のその二からその五まで4つの戦略を紹介したいと思い ます。

 

心構えその二、「訪問の繰り返しが不可欠」

 企業は適地適産の原則で工場を立地します。水のないところには、余程のことの無い限りビー ル工場はこないということです。これを適地適産といいます。

 県の中でも、地域の産業資源、立地条件が大分違います。フットルーズタイプの業種の勢いが いいので、どこでもいいという企業もいるかも知れませんが、工 場立地は企業の求める立地因子と地域が持つ立地条件が合致してこそ、初めて立地が実現するわけですから、効果的な誘致活動を目指すのであるならば、地域別 に企業誘致戦略を立てることが必要だと思います。

 つまり、県内を幾つかに分け、地域の産業資源と立地条件の特性を評価し、地域のセールスポ イントを示し、それとの関係で誘致対象業種を選定するということです。

 また、県内の市町村間で企業誘致情報を交換することも大切です。 県挙げての企業誘致説明会の参加リストなどは当然共有していますが、さらに必要なことは、例えば、A市が交渉していた企業の話がご破算になった場合、この 情報を県内の他の市町村に流し、何としても、県内での誘致を実現するということです。「これを提供したら他が得をする。」「しゃくだから黙っている」とい うことのないようにすることです。他県に取られたら元も子もありません。

 

心構えその二、「訪問の繰り返しが不可欠」

   最近、三重県と亀山市がシャープの大型液晶パネル・液晶テレビ工場に高額補 助金を交付することが話題になっています。それに追随しようとする県もあります。

 

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参考事例 2

  シャープの亀山工場への投資額は全体で1,500億円、これに対し、三重県は上限90億円(15年分割 )の「産業集積促進補助金」、亀山市は上限45億円(15年分割 )の「産業振興奨励金」を交付します。この補助金は、三重県のクリスタルバレー構想をはじめとした、今後成長の見込まれる産業集積の核となるような事業所 の新規立地を対象とした補助金で、シャープが交付第一号になります。
 三重県は年間10億円の税収増を想定、10年前後でこの補助金は税収で回収できるとしています。
 さらに、バレー構想関連企業が三重県内に工場、事業所を新設新設又は増設する場合には、「バレー構想関連産業等立地促進補助金」が交付されま す。シャープの例では、FPD関連産業である凸版印刷のテレビ用液晶カラーフィルター工場(三重工場 関町)の立地や、日東電工の液晶表示用偏向フィルム 工場(亀山事業所内)の増設等のが交付されます。

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 高額補助金と言うと、びっくりしますが、海外では日本企業が外国に工場立地すると、国内に 比べ、高額補助金を始め、税制、金融の面で破格の優遇措置を受けています。国内立地に対しても、最近、手厚い優遇措置を期待する企業が多くなりました。

  例えば、在日米国大使館が本国に送ったレポート「対日投資環境に関する報告書」(2001年7月)によれば、米国資本にとって日本は恰好な投資先だとし て、対日投資を勧めています。その中で日本の自治体は外国企業の誘致に関心を高めていますが、県から期待できる投資奨励措置は最高1,000万ドルに満た ないとし、国際的にも規模が小さいと指摘しています。12億円程度では少ないと言っているのです。

 補助金、税制、金融、規制緩和など日本企業が外国で受けている水準に並ぶ優遇措置を講ずる ことが今後必要になります。

 そうすれば、ブラックボックス指向の高まりに伴い、海外立地に歯止めがかかるかも知れませ ん。

 

誘致のための戦略その四、「国際競争力のある立地環境を整備する」

 ローコスト規制緩和などが必要ですし、企業の発展段階に応じた基盤提供なども大事です。

 ローコストと言えば、まず土地代、用水料金、電気料金、交通料金などが対象になります。日 本と外国の経営資源コストを比較したものがいくつかありますが、比較的手に入りやすいものとして、JETROの機関誌「ジェトロセンサー」やJETROの ホームページにあります。(注1)

 ここでの比較を見ると、ローコストを求めて海外進出する訳がよく分かります。その上、いろ んな規制があることも後押し要因になっているのでしょう。

 企業の発展のホップ・ステップ・ジャンプに合わせた基盤提供も必要です。このため、産業団 地のあり方も今後、一工夫することが必要です。多くの工業団地 は土地を買って、造って、売るという不動産分譲型ですが、私はかねてこれを事業活動支援型に転換するべきであると、地域公団、自治体などに提案してきまし た。勿論、一定規模以上の団地が対象になります。既に、これから申し上げるような団地が多くなりました。

 つまり、団地にインキュベート施設、貸し工場、貸し研究室、共有利便施設、事業支援機関な どを設置し、企業の成長にあわせて以下のような具合にします。 入居企業には団地内の事業支援機関がサービスを提供します。

ホップ

インキュベート施設、貸し工場、貸し研究室

ステップ

大きめの貸し工場など

ジャンプ

土地を分譲する

 特に、土地の分譲は売るとともに、貸すことも必要です。既に実行されていると思いますが、 事業用定期借地権方式、延納特約付分譲方式、割賦分譲方式、建物リース方式などで対応することです。ディスカウントも必要です。

 また、大学を核として、このような団地をつくり、企業の工場、研究所、事業支援機関からな るクラスターをつくることを日本は急がなくてはなりません。これが国際競争力のある事業環境づくりのために最も重要なテーマの一つになります。(注2)

 

誘致のための戦略その五、「企業支援体制を強化する」

 まず大事なことはワンストップサービスの実施です。用地買収-建設-操業に係る法律、規制 などの行政窓口を一元化することで、企業のスピードに行政が対 応することです。窓口のたらい回しを排除することです。また、行政や事業支援機関が企業のご用聞きをしたり、産学連携の仲立ちをしたり、事業支援機関が企 業の研究開発、技術開発、販路開拓を支援したり、社員の住宅斡旋などサービスを提供したりも必要です。要は福島県に立地したら快適、安心、安全に仕事がで きたと評価されることが大事です。

 

誘致のための戦略その六、「トップセールスと市民参加の企業誘致を行う」

 トップセールス。知事や市町村長が企業のトップに会って、企業誘致することです。既におや りになっていると思いますが、念のため、申し上げておきます。

 例えば、大分県の企業誘致の多くは、つまり、キヤノン、東芝、ダイハツ、サッポロビールな どは平松前知事のトップセールスが功を奏しました。通商産業省 (当時)時代の産業界に対する顔の広さ、人脈がものをいったのです。勿論、立地条件の良さ、県職員のフォローがあってのことですが。

 市民参加の企業誘致というのは、ある県から受託した企業誘致戦略の中で提案したことです。 担当者からは面白いと評価されましたが、実際にはまだやっていないと思います。
 これは県庁の職員一人一人が自分の知っている会社の社員に「是非、本県に立地してください」というレターを資料と一緒に送るということです。これによ り、県庁職員全体に「企業誘致の大切さと苦労を分かって貰う」とともに、企業に対して「県の熱意、県民の熱意」を伝えようというものです。


 企業誘致も地域間の大競争時代です。皆様の御成功を祈っております。 これで終わらせていただきます。

 

(注1)

ジェトロセンサーでは、毎年アジアとの投資コ ストの国際比較を記事にしています。
ジェ トロのホームページからも国際比較のデータを得ることができます。こちらはアジア以外の各国も比較できます。トップページから「海外のビジネス情報」の ページを開いて「貿易投資制度・統計の総合検索(J-FILE)」の中にある「投資コスト比較」から世界の主要都市の投資コストを比較、参照できます。 (日本のデータは、横浜が基準になっています)

   

(注2)

クラスターについては、産立研論稿集第1回「地域産業政策策定とクラスター形成」をご覧ください。また、拙著の最近発表のレポート等でもふれています。

 

 

 

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