第二回(前編)

 

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(本稿は、福島県企業誘致推進協議会総会-16年4月22日-での講演の骨子を元にしています。)

はじめに

□増加へ転じた全国の工場立地

 さて、本題に入る前に、最近の工場立地の動向を手短に説明します。1989年に4,157件・4,725haあった全国の工場立地はバブル経済の崩壊と 同時に左肩下がりで激減を続け、2002年には844件・872haと、かつての1/5に落ち込んでしまいました。原因は安いコストを求めての海外進出、 国内工場の遊休地の発生、長引いた不況による需要の停滞、設備投資の減少などです。

 しかし、2003年の全国の工場立地は大分持ち直してきました。1,052件・1,325haの実績を上げました。対前年度比は立地件数で24.6%増、立地面積で51.9%でありました。

 福島県は26件・43haで、全国の順位は件数で16位、面積で12位、東北ではともに2位でした。

 さて、このままの勢いで工場立地は増加するかどうかですが。結論から言えば、増加するでしょう。その理由は、機械系を中心とする高機能製品・基幹部品の 開発・生産の国内回帰、つまり高度技術を外国に流出させないよう「ブラックボックス」化すること、景気回復に伴う需要の増加が見込めること、新産業・新事 業・大学発ベンチャーなど新企業の創出が増加することなどです。

 しかし、国内立地、国内生産が増加する傾向にある一方で、国際分業の高まりの中、海外立地・海外生産も増加します。また、国内工場の再編成・リストラによって生じた遊休地などもあります。

 したがって、国内生産、国内立地が増加するとは言え、かつてのような盛況は期待できそうにないと見た方がいいでしょう。

 

図 立地動向の推移

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 しかし、自治体の企業誘致は、地域経済の再生のために不可欠なものの一つとして、益々力が入っているところです。少なくなったお客さまを巡り、自治体の企業誘致競争は激しいものになっています。

 そういったことで、皆様は地域経済活性化を実現する戦略要員としての重責を担っていらっしゃる方々であります。がんばってください。

 企業誘致の対象も、工場、研究所、流通施設、商業施設、娯楽施設、ソフトウエアハウス、コールセンターなど様々のものに広がっていくでしょう。

 企業誘致の最大の目的は、雇用の増加、税収の増加、関連産業の集積を図ることですから、その目的達成のためには、極論すれば、業種は何でもいいとも言え ます。ハイテク企業にこだわる余りローテク企業を疎かにしてしまったという例がないようにしなければなりません。

 

 

企業誘致担当者の心構え

 それでは、企業誘致担当者の心構えをお話しします。これからお話しすることは、企業の方々、自治体の誘致担当の方々から聞いた話を整理して、申し上げる次第です。

 

心構えその一、「セールスマン精神を持つ」

 皆様は公務員です。今までの御経験の中で、頼まれたことは多くても、頼んだことは余り多くないと思います。言葉は適当でないかも知れませんが、「待ち」の姿勢でも職務を全うすることができると思います。

 しかし、企業誘致はそうは参りません。待ちの姿勢は全く通用しません。こちらから出向き、働きかけなくては、企業は振り向いてくれません。

 セールスマンになりきらなくては、なりません。セールスマンシップを持たなくてはなりません。

 セールスマン精神とは何か。セールスマンHow To ものの本を読めば分かることですが、私なりに解釈しますと、

    「商品を売ることに情熱を持ち、喜びを感ずること」
    「商品知識が豊かなこと」
    「購買者心理を掴んでいること」
    「断られても挫けず、粘り強さがあること」
    「人に好かれ信頼される性格であること」
    「人と会うのが大好きであること」
    「サービス精神に富んでいること」
    「何事にもquick response できること」

・・・だと思います。

 

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参考事例 1

 島根県の斐川町役場に福間 敏さんという方がいらっしゃいます。内閣官房と経済産業省が昨年夏に選んだ地域産業おこしに燃えるひとの一人です。

  福間さんは斐川町に富士通、村田製作所、島根島津製作所など名だたる企業を誘致した立て役者です。福間さんに昨年、その秘訣を尋ねたところ「情熱、粘り強 さ、諦めない、サービス精神、長い付き合い、情報収集」だとの答えが返ってきました。 最初に狙いをつけた富士通の誘致に漕ぎ着けるまで10年かかったと 仰っていました。ある会社の幹部と1週間も連日、酒を飲みながら付き合ったことがあるそうです。福間さんは「酒席だけでなく、自分の座持ちも良かったです から、退屈せずに、付き合って頂けたのでしょう。しかし、1週間も付き合ってくれた立派な方だ」とも話してくれました。

  また、10年ほど前に全国的に起こった水不足の時、福間さんは企業誘致で接触していた半導体企業や食品企業など100社に各々20リットルの飲料水を送っ たそうです。さらに、なかなかやるなと思ったのは、企業誘致で訪問する際、出雲地方の企業の情報や技術の情報を提供したり、地域外の企業と出雲の企業との 交流、例えば、浜松、広島の企業の出雲事業所が開発した商品をNPO法人ビジネスサポート斐川で全国に販売したり、よその企業のために一肌脱いでいるとい うことでした。

 福間さんのお話でセールスマンとは何か、セールスマン精神とは何かが分かったような気がしました。

  (地域産業おこしに燃えるひとは、一橋大学大学院の関 満博先生を委員長にした選考委員会で、全国から33人が選定されました。私も選定委員の一員として 選定に参加しました。昨年9月には、総理官邸で燃える人達と一緒に小泉総理、福田官房長官(当時)、安倍副官房長官(当時)たちにお目にかかりました。小 泉総理は一人一人と握手し、激励していました。)

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心構えその二、「訪問の繰り返しが不可欠」

 企業誘致のためには、いろんな情報をもとに目星をつけた企業にパンフレットやアンケートを送ったり、ホームページでの情報提供、新聞、雑誌への広告掲載 などでPRしたりするわけですが、これでお客さまが飛び込んでくると考えない方がいいでしょう。勿論、問い合わせなどもあるでしょうが、新聞広告を見たか ら立地するよという話は万に一つあるかどうかでしょう。

 しかし、PRは必要です。企業の企画担当者は結構これを読んでいて、その時のためにファイルしたりしています。ごくたまには知り合いの企業から私どもに問い合わせがあったりもします。

 さて、PRも重要ですが、会社訪問門がもっと大事です。公務員としての訪問でなく、セールスマンとしての訪問です。名刺の渡し方、挨拶の仕方、説明の仕 方、話題、笑顔、服装・・・。どれをとっても、相手にいい印象を持って貰わなくてはなりません。自分の地域、団地に興味を持って貰わなくてはなりません。 この点、極めて重要です。

 訪問は当然のことながら、一度で終わることなく、春、夏、秋、冬くらいの単位で定期的に行うことがいいようです。その時のお土産は、地域の情報がいいで しょう。最近、こんな企業が立地した。こんな地元企業が成長している。大学がこんな研究開発に成功した・・・など地域の話題を提供することです。

 また、訪問はアポイントメントを取り、長居しないことが肝心だと思います。飛び込みは相手に迷惑をかけるだけです。もっとも、アポイントメントを取る段 階で断られることが多いのですが、ここは何度も粘り強くお願いすることです。福間さんの言う「粘り強さ」です。

 なお、私どもが委託を受けた企業誘致調査ではアンケートに回答していただいた企業の了解を得て、自治体の誘致担当者とうちの研究員が一緒に企業訪問し、 誘致のお願いをすることがあります。これで誘致が決まったこともあり、また企業の関心が深まったところもあります。

 

 

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